2010年05月26日

神と悪魔が交錯するヒンドゥー教の絶対三神の謎

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アーリア人の侵入以前、インド南部ではドラヴィダ人などの先住民が、インダス文明を築いていた。
ドラヴィダ人のルーツも、シュメール人だった可能性が高い。
インド神話はバラモン教を生み出したが、ジャイナ教や仏教の隆盛に伴って変容を余儀なくされ、ドラヴィダ人などの土着の宗教を習合しつつ、長い歳月をかけて「ヒンドゥー教」が形成されていった。

そして、ヒンドゥー教の主神も三神構造となっている。
まず、宇宙創造神「ブラフマー」
これは、宇宙の根本原理「ブラフマン」が顕現した神である。
ブラフマーの子「ヴィシュヌ」は、太陽神で宇宙の維持を司る。
そして、暴風雨の神にして、宇宙の破壊を司る「シヴァ」。
破壊というからには、本来は「悪魔」と呼ばれる存在で、聖書で言う「サタン=ルシファー」に相当する。
つまり、三位一体の最高神の一柱を「悪魔」が担っているのだ。

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実はこれは、キリスト教に於いても同じである。

「すべての国の民がその前に集められると、羊飼いが羊と山羊を分けるように、彼らをより分け、羊を右に、山羊を左に置く。
そこで、王は右にいる人たちに言う。
『さあ、わたしの父に祝福された人たち……』
……(中略)……
それから、王は左にいる人たちにも言う。
『呪われた者ども、わたしから離れ去り、悪魔とその手下のために用意してある永遠の火に入れ』」

(「マタイによる福音書」第26章32-41節)

聖霊とサタンは表裏一体の関係にあるのだ。
ブラフマーは創造神ゆえに「御父ヤハウェ」と同一神であり、本来は「生命の樹」の中央に位置する。
だが、ヒンドゥー教では絶対三神の配置は、中央が「ヴィシュヌ」、右が「シヴァ」、左が「ブラフマー」と、基本的に決まっている。
その理由は、ヴィシュヌの化身の1つが「クリシュナ」だからである。
クリシュナはイエス・キリストの予型。
ヴィシュヌとクリシュナの関係は、そのまま「御父ヤハウェ」と「御子イエス・キリスト」となる。
従って、ヴィシュヌが最高神となっているのだ。

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だが、その三神は正面を向いて描かれている。
「生命の樹」は、神々の視点で左右を見る必要がある。
従って、神々を後ろ向きにして、左右を反転させなければならない。
その原理で、キリスト教とヒンドゥー教の絶対三神を対応させると、以下の図式となる。

「御父ヤハウェ=維持神ヴィシュヌ」
「御子イエス・キリスト=創造神ブラフマー」
「聖霊ルーハ=破壊神シヴァ」


つまり、シヴァは「ルシファー」の顔を持っているのだ。
その証拠に、シヴァは体に蛇を巻き付けている。
また、シヴァがサタンであるなら、暴風雨の神「バアル」に置き換える事も出来る。
事実、シヴァの乗り物は「聖牛ナンディン」で、シヴァの象徴は「牛」である。
シヴァは暴風雨の神だが、牛頭天王「スサノオ」も暴風雨の神。
ここまでは、基本的にキリスト教の三位一体と一致し、特に問題はない。

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だが、ヒンドゥー教をナメてはイケない。
何と、ヴィシュヌまでもが7つ頭の「アナンタ竜王」を連れているのだ。
アナンタ竜王は、黙示録の竜「ルシファー」に他ならない。
ヴィシュヌ自身の頭を合わせると、8つ頭の「ヤマタノオロチ」となる。

「ヤハウェ=ヴィシュヌ=ヤマタノオロチ」
「ルーハ=シヴァ=スサノオ」


「スサノオ」が「ヤマタノオロチ」を退治した話は、「聖霊ルーハ」が「御父ヤハウェ」を倒したという事になる。
聖霊ルーハは「ルシファー」としての顔を持っているので、天使長「ルシファー」が絶対神「ヤハウェ」に刃向かった事に比定できるだろう。
同時に、シヴァがヴィシュヌを倒した事になるが、ここは少し観点を変える必要がある。
創造主という繋がりで見れば、ヤハウェは「ブラフマー」にあたる。

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ここで、飛鳥昭雄氏が興味深い指摘をしている。
ブラフマーには5つの顔があった。
ブラフマーとシヴァの頭の数を合わせると6つ。
シヴァは、自分こそが根源的な絶対神だと主張し、ブラフマーの頭の1つを斬り落とした。
ブラフマーは頭を1つ斬り落とされて4つになり、全体の2/3。
シヴァは、自分の頭とブラフマーから取った頭を合わせて2つになり、全体の1/3。
ルシファーも「私は神だ」と宣言したが、ブラフマーとシヴァの頭の数の比率は、ルシファーが天界で反乱を起こした時の天使の比率と一致する。

「また、もう一つのしるしが天に現れた。
見よ、火のように赤い大きな竜である。
これは七つの頭と十本の角があって、その頭に七つの冠を被っていた。
竜の尾は、天の星の三分の一を掃き寄せて、地上へ投げつけた」

(「ヨハネの黙示録」第12章3-4節)

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「天の星」は天使の比喩で、ルシファーは天使の1/3を味方に付けて、神にクーデターを起こしたという。
尚、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの3神を全体の数だとすると、シヴァが全体の1/3、ブラフマーとヴィシュヌが全体の2/3。
シヴァ(ルシファー)がブラフマー(ヤハウェ)の頭を斬り落とした点では、聖書と真逆の結果になっている。
だが、シヴァが絶対神の地位を獲得せず、魔王とされている事を考えると、最終的にブラフマーには勝てなかったという事になる。

この事は、シュメール神話まで遡れば分かる。
ティアマト(ルシファー)が天地創造神「マルドゥク」に倒されたからだ。
ところが、ティアマトは総ての神々を生んだ原初の神なのだ。
という事は、ルシファーが根源神だという事になる。
いみじくも、シヴァ(ルシファー)は、「自分こそが根源的な絶対神」だと主張している。

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だが、ヒンドゥー教に於いて、宇宙創造神と位置付けられているのは「ブラフマー」。
しかし、ブラフマーは創造神ゆえに観念的で、神話に乏しく人気がないという理由で、脇役に置かれている。
しかも、ブラフマーやヴィシュヌでさえ、バラモン教時代には重要な神ではなかった。
そもそも、「ヴィシュヌ派」か「シヴァ派」によって、最高神の位置付けが異なり、最高神が一定していないというのが現実である。
様々な神話や宗教を取り入れて複雑化したヒンドゥー教……。
一般的な「絶対三神」の配置だけで分析するのは危険である。
posted by ヘンリー・クライスト(夢蛇鬼王) at 19:54| Comment(0) | 【第1章】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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